【世界で生きるチカラ】の感想〜日本語DPが200校に?

世界で生きるチカラ

どうも、くまの助です!

2人の子どものおやじをやってます!

 

今回は、「世界で生きるチカラ—国際バカロレアが子どもたちを強くする」という本をご紹介します!

国際バカロレアのことを調べているうちに、本書を見つけたので早速購入!

著者の坪谷ニュウエル郁子氏は、娘に自分の思う教育させたいという思いで東京インターナショナルスクールを設立し、
さらに国際バカロレア機構のアジア太平洋地区の理事長に就任されたというすごい方です。

 

本稿では、本書で紹介されている内容(主に国際バカロレアについて)と、本書の出版後から現在までに変化した状況についてまとめました。

 

2018年が日本の教育のターニングポイント

本書では2018年に日本の教育に2つの大きな変化が起こると言っています。

1つ目は、2018年を目処にセンター試験が廃止され、達成度テストと言う新たな枠組みの基準テストが行われる予定であること。
(なお、2018年現在の情報では、達成度テストは2020年から段階的に開始されるとのことです。)

もう一つは、政府が閣議決定した「日本再興計画」において、2018年までに日本語DPの導入校を200校まで増加させる計画があるということ。

 

日本語DPとは、国際バカロレアのDP(16歳から19歳を対象にしたコース)の日本語対応版のことです。

本来であれば、国際バカロレアは英語、フランス語、スペイン語のみが公用語で、日本においてはほぼ英語で行われていましたが、日本語DPでは教科の大部分を日本語で受講できます。

 

国際バカロレア

本書のPart 3で、国際バカロレアについて詳しく説明されており、ここが本書の読みどころとなっています。

まず、国際バカロレアとは、国際バカロレア機構によって運営される全人教育を理念とした教育プログラムのこと。

このプログラムに対応した教育を受けることにより、世界のどの国の学校を卒業しても、様々な国の大学(オックスフォードやハーバードなどの難関大学含む)に円滑に入れるようになります。

国際バカロレアには、子供の成長段階に応じた3つのコース(PYP、MYP、DP)があります。

 

PYP

PYPは、日本でいう幼稚園〜小学生くらいの子供を対象にしたカリキュラムです。

PYPで特徴的なのが、生徒は教科融合型の学習ユニットを学習するということです。

本書で紹介されている教科融合型の学習ユニットの例としては、災害というテーマに対して、科学的視点(災害を引き起こす気候の仕組み)と社会学的視点(自然災害が我々に与える影響)など異なった側面から災害というものについて学んでいく、ということが挙げられています。

 

PYPの事例として、著者が運営する東京インターナショナルスクールの授業風景が紹介されています。

授業は生徒同士のディスカッションを中心に進み、教師はあくまでその進行のサポート役(ファシリテーター)に徹します。

これは、一般的な日本の学校の授業スタイル(教師が生徒に対して一方的に知識を教える)とは全く異なるものであることがわかります。

この授業風景のくだりは読んでいて非常にわくわくしました!

自分が子供の頃にこんな授業を受けてみたかったなぁ。

 

なお、PYPでは、機構が定めた最低限のルールを守れば良く、非常に自由度が高いカリキュラムを組めるそうです。

これは裏を返して言えば、学校間での内容の差が大きく、学校選びを慎重に行うべきだなと思いました。

 

MYP

MYPは11歳〜16歳を対象にしたプログラム。

教科融合型の学習ユニットを学習するのはPYPとは変わりませんが、それに加えてボランティア等の課外活動にも重点が置かれるそうです。

 

事例としては、玉川学園のMYPが紹介されています。

それによると、生徒は教科書を事前に読んだ上で、授業ではその内容を踏まえて、クラスメートとのディスカッションやグループワークを行うとのことです。

日本の普通の学校だと教科書を見ながら教師の話を聞くというのが一般的ですが、MYPでは教科書は自分で読んで内容をある程度頭に入れた上で授業に望むことが前提になっているのがなんとも高度ですね!

 

さらにMYPがPYPと大きく異なるのが、外部評価が入ると言うことです。

生徒のレポートのいくつかを国際バカロレア機構に送り、外部評価委員がそれを評価をします。

これによって生徒に対して公平な評価を行うことができるとともに、教員の基準も担保されます。
(教師の評価が外部評価と大きく異なると、教師の評価の妥当性が疑問視されるため)

 

DP

DPは16歳〜19歳を対象としたバカロレアの中で最も高度なプログラム。

大学入学のための準備コースに相当します。

DPでは次の6つの教科グループから一科目ずつ選択します。

  • 言語と文学(母国語):{言語A:文学、言語A:言語と文化、文学と演劇}
  • 言語習得(外国語):{言語B、初級語学}
  • 個人と社会:{ビジネス、経済、地理、グローバル政治、歴史、心理学、環境システム社会(※)、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、社会・文化人類学、世界の宗教}
  • 実験化学:{生物、化学、物理、デザインテクノロジー、環境システムと社会(※)、コンピュータ科学、スポーツ・運動・健康科学}
  • 数学とコンピュータ科学:{数学スタディーズ、数学SL、数学HL、数学FHL}
  • 芸術または選択科目:{音楽、美術、ダンス、フィルム、文学と演劇}

さらに選択した科目の中から、3科目をハイヤー、残り3科目をスタンダードに選択します。

つまり、生徒は理系文系の枠組み無く自由に科目を選択し、さらにその中から自分がより深く学習したい科目(ハイヤー)を設定するわけです。

さらに、これらの教科のほかに課題論文、知の理論、課外活動という3つの活動が加わるそうです。

 

そしてDPでは、「世界統一試験」と言う、どの大学に入れるかに影響する重要な試験が行われます。

本書に試験問題の例が紹介されていますが、大人でもまともに答えられる人が少ないような高度な問題が出題されるようですね・・・。

この試験では、各教科について1〜7までの7段階評価がされ、さらに先程の課題論文、知の理論、課外活動の3点が加わって45点満点になります。

そのうち24点あればBPの修了資格を取得できます。

ただし海外の難関大学では、40点前後の極めて高いスコアを要求されるようです。

 

本書では、DPの事例としては立命館宇治高等学校のDPコースが紹介されています。

やはりDPはカリキュラムのレベルが高く、深夜までかかって論文書き上げたりするなど、かなりのハードワークが要求されるようです。

 

2018年に日本語DP認定校200校になったのか?

本書が刊行されたのは2014年の4月で少し前の情報となっているのですが、現時点(2018年6月)で日本語DPを取り巻く状況はどのように変わったのでしょうか?

今年は、本書が言う「日本の教育が大きく変わる年」のはずですが・・・。

 

日本語DPは導入されたか?

以下の文部科学省の発表にあるように、2014年に日本語DPの対象科目が、経済、歴史、生物、化学等に加えて、数学、物理まで拡大されています。

国際バカロレア(IB)における日本語で実施可能な科目の追加について

従って、日本語DPの導入自体はちゃんと進んだということですね。

 

日本語DP認定校は200校になったのか?

国際バカロレアの認定校は、以下の文部科学省のサイトにまとめられています。

4. 国際バカロレアの認定校

上記のサイトを見る限りでは、DPを提供している学校は、1条校(いわゆる日本の普通の学校)で17校、インターナショナルスクールで16校です。

その中で日本語DPを導入している学校はわずか9校にすぎません。

現状を見る限りでは、ほとんど導入が進んでいませんね・・・。

 

今後日本語DPの導入を進める高校はどこか?

しかし、上記以外に、日本語DPの導入を進めている高校として下記があるようです。
(全部網羅できてないかもしれませんが・・・。)

このように、徐々にではありますが、日本語DPを導入する高校が増えつつあるようです。

ただ、著者も本書で述べているように、国際バカロレアは、インターナショナルスクールや一部の私立高校だけでなく、公立高校にも普及が進まなければ、結局一部の地域の一部の裕福な家庭にしか手が届かないもののままです。

庶民に対する教育の選択肢を増やすためには、そして、より多くの世界で通用する人材を育てるためには、日本語DPのさらなる普及が期待されます。

 

一方で、国際バカロレアは英語で学ぶからこそ意義があるのであって、日本語DPにどれほどの意味があるのか?という考え方もあると思います。

たしかに、私自身もその考え方には同意できる部分もあるのですが、著者が言うように、やはり母国語の方が物事をより深くまで考え探求することができますし、たとえ言語が日本語になったとしてもバカロレアで体得される学習態度や物事への取り組み方には変わりがないと考えられます。

 

一庶民である私としては、今後日本語DPの認定校が増えることを切に願います。